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ついに僕の退院の日が来てしまった。
荷物をまとめ病室から出る前に、変わらず閉じられている『サトウ ミノル』のベッドのカーテンの前に立った。
僕を悩ましつづけた『サトウ』の正体を知らず、このまま退院するなんて、絶対にできなかったからだ。
意を決した僕は、クリーム色カーテンを両手でつかむと、勢いよく開けた。
――誰もいなかった。
真新しい寝台があるだけで、サトウなる人物は皆無だった。
僕はしばし呆然とし、訳が分からないまま視線を奥の壁へと泳がせた。
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