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恐らく、このアルゴリズムなら、H12000つまり、12000量子ビットのAI量子コンピュータを、これまでに経験が無いほどの演算速度と効率で、動かすことが可能になるはずだ。
仄暗いラボの、愛嬌の無い机の上に置かれたそのモニターには、upload y/n?の文字が、静かに点滅している。
シンギュラリティという言葉が、悦の頭をよぎって、思わず飛び上がっては、姿勢を変えると、ラボの椅子の背もたれに寄りかかり直し、キーボードを叩き過ぎて、疲れて引き攣っている指で、指の貧乏揺すりのように、自分の組み直した足の膝頭を、無意識に打ち続けている。
深く、一つ息を吐いた東山悦は、ついに意を決して、yのキーを丁寧に押した。
もの凄いスピードで記号が流れて行くモニターを睨み、ついにアップロードが終わったことを確認すると、悦は電源を一旦落とし、数秒待ってから電源を再投入して、H12000を再起動させた。
あのアルゴリズムを反映させたH12000は、何を考え、何を演算し、何を話すだろうか。
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