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「え……」
その霊能者を見て、一瞬、言葉に詰まった。
不気味さの漂うオレンジ色の光とは全く違う鮮やかなアメジスト色の光にその霊能者が包まれていたからだ。目がおかしくなったのかと思った。
チリン…
涼し気な鈴の音にハッと我に返るとその光は消え、男の姿がはっきりと見えてくる。
「うそ、陰陽師……?」
撮影中だということを忘れ、素に戻っていた。
目の前の霊能者が陰陽師のような恰好をしていたからだ。
はるか昔にタイムスリップしたかのような黒の狩衣、中に着ている単は緋色で、端整な顔立ちの彼の落ち着いた大人らしさを表していて。
「は、初めまして。ユウです」
「初めまして、小長光です 」
無表情で挨拶し軽く会釈した彼の目力に、刹那吸い込まれそうになる。茶髪の前髪から見える切れ長で薄茶色の瞳は真っ直ぐに俺を見つめていた。
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