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な、、なんだよ!
こっちを見ているのに視線が合わない。彼は、俺をすり抜けた左肩越しを見つめている。なんだか気持ち悪すぎる……不気味な男だ。
「父からしろと言われたので、台本通りに読んでいるだけです」
俺の視線に気付いたようで、小長光はビデオの方へと視線を戻した。彼の言葉にすかさず浅香が言葉を付け加える。
「私も動画を見させていただきました。狩衣とは不似合いの綺麗な白い洋館で開運テクニックを説明されるんですけど、その嫌々やらされてる感じとか笑いになっていない笑顔が……ぷっ。面白くて嵌っちゃって…ふふっ」
「ごめんなさい!……でも…」
浅香は動画を思い出したようで笑い始めた。
「いいんです。構いません、本当に嫌々ですから」
「それ、こんなところで言っちゃだめですよ~お父さんから怒られますよ」
なるほど、そっち系の面白さか。
確かに、この現代には合わない服を着て面白くなさそうな顔して、明るい態度で臨まないといけないはずの開運動画を棒読みだなんて自虐もいいところ。突っ込み入れながら動画を見てみたい気がする。
「そんな開運動画が人気の小長光さんですが、霊を呼び寄せ祝詞を読み除霊する降霊力という能力を持っておられます。今この辺りに霊を感じますか?」
「そうですね……」
小長光は黙り込むとトンネルの方に踵を返し目を細めた。スッと息を吐き口の中でもごもごと何かを言うと俺の方を向いた。
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