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「ありがとうございます!」
女性は少しハニカミながら、しかし、力強く言葉を発する。159cmと決して高身長ではないもののその立ち姿は堂々としており、より大きく見える。
「オン・ベース、ハリー・ウォルトン!!」
女性がコールすると同じく下手側から帽子を被った背の高い細身の白人男性が現れる。
ネイビー色のテーラードジャケットを着用し、その胸元からは白地のシンプルなTシャツにプリントされた英文が僅かに覗く。黒いジーンズのバックポケットに左手を突っ込み、右手を観客席に向けて挙げ、歓声に応えながらウィンクをする。
ハリーは歩を止めることなく女性の後ろ側を回り込み、スタンドに立ててある6弦ベースを手に取った。その後、ヘッド部分にあるペグを弄りながらベースアンプに耳を澄ましてチューニングを始める。
「オン・ドラムス、レイモンド・ジャクソン!!」
今度は下手側から坊主頭で筋肉質な白人男性が現れる。
着ているグレーのTシャツは演奏された曲目の激しさを示すかのように汗で変色し、レイモンドはTシャツをパタパタとはたつかせながら歩く。笑みをこぼしながら軽く会釈をした後、ドラムセットの前に座ると置いてあったスティックを持って感触を確かめる。
「ピアノは私、山内穂乃果です!」
観客の拍手と歓声はより一層大きくなる。
「へへへ、自分で自分の名前をコールしちゃった」
ピアニストの山内はお茶目に笑い、その様子に観客席から笑いが起こる。会場が静まるのを待ってから彼女は再び話し始める。
「今日はこんなに沢山のお客さん、ありがとうございます! こうやって日本に帰って来れたこと、そして"ホノカ・ヤマウチ・トリオ"で演奏出来たこと、とても幸せに感じてます!」
またしても会場を盛大な拍手が包み込む。ところどころ観客席から「良いぞ!」「お帰りー!」と言った掛け声が耳に入る。
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