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理由は2つある。
1つは単純に光の見た目だ。クラスで目立つことを嫌う光だがそれを許さない程の容姿を持つ。白い肌にぱっちりとした大きな二重の目。その長いまつ毛は手を加える必要がない程に整っている。目立たないようにしていることが逆に周囲の彼女への興味を引き立ててさえいる。
明里はクラスメイトの中で噂話が大好きな一部生徒たちが稀に光について話をしているのを耳にしている。『モデルにスカウトされたらしい』だとか『とんでもないお金持ちの娘らしい』だとか根も葉もない内容で呆れるものばかりだが、それは光への高い関心を示している。その度に明里は彼らに対して軽い優越感に浸る。何故なら光のことをこの学校で一番に知っているのは紛れもなく自分であるからだ。
––––そしてもう1つ
「指揮が私で西野が伴奏って組み合わせ中学の時にもあったやん?」
「うん。名コンビ再びやね」
「そういうの良いったい。西野、毎回テンポがバリ速くなるんよ」
光は赤信号の前に立ち止まりチラッと明里の表情を見てすぐに正面を向き直り、冷えた手を数回こすった後に4回、一定の間隔で息を吹きかける。
「緊張するんやない? まぁ、しょうがないやん。それにほら、中学の頃より上手になっとるかも知れんよ?」
「……だと良いんやけど」
明里はこれ以上何を言っても無駄だと悟り、言葉を切った。
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