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2人は信号が青になったのを確認して横断歩道を渡り始める。鶴見高校の正面を通るこの大きな通りは『甲鶴通り』と呼ばれ、2人はこの大通りに沿って徒歩で登下校している。
時間は正午前。恐らくは昼休憩であろうスーツを着たサラリーマンたちが数名、牛めしチェーンである松木屋に入店していくのを見かける。また、大学生らしき若い集団がその先にあるラーメン店『八蘭』に入っていく。
その八蘭の前を横切る『中井商店街』の前で2人は信号待ちの為に立ち止まる。
「あ、光、なっちゃん万十食べる?」
「んー、帰ったらすぐお昼ご飯だろうからいいや」
「オーケー」
全国各地にある多くの商店街がシャッター通りと揶揄されるほど活気がなくシャッターが下りた店舗が目立つ中、中井商店街は非常に活気立っている。中井商店街には雑貨屋、家電店、衣料店、医薬品店、居酒屋などの店が並び、大体のものはこの商店街で買い揃えることが出来る。加えてこの中井と呼ばれる街は住宅街かつ学生街である為に幅広い年齢層が利用することもこの商店街の特徴の一つである。
中井商店街の最奥にある『なっちゃん万十』は地元の住民から愛されているたい焼きのような焼き饅頭である。学生たちは下校時によくおやつとしてこの『なっちゃん万十』を買い食いしている。光と明里の2人もその例外でなく偶に下校時や休みの日に寄っている。
2人は中井商店街を横断し、そのまま真っ直ぐに突き進む。レンタルビデオ店である『TAMAYA』を通り過ぎて左へ曲がると、それまで並んでいた様々な娯楽店やスーパー、家電店、飲食店の数が減っていき、徐々に住宅街へと変化する。そのまましばらく歩いていると13階建てで周りのマンションより少しだけ大きな茶色いマンションが現れる。いわゆる"億ション"と呼ばれるような超高級マンションではないものの上品なデザインで、ここの住人は生活にそれほど苦労していないだろうと思わせられる。
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