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Introduction
「これが同じピアノなの……?」
7歳になったばかりの幼い少女が食い入るようにテレビの画面を見ている。
テレビ画面の中では既に全てのセットリストを終えたピアニスト、ベーシスト、ドラマーの姿はなく、ただ楽器と様々な機材の置かれたステージが映っているだけである。しかしながら観客はその演者のいないステージに向けて総立ちで割れんばかりの拍手を送り続けている。丁度チャンネルを切り替えてこの様子を見た視聴者はこのバンドが凄まじい演奏を披露したことを容易に感じ取ることが出来るだろう。
手を弾く音1つ1つが熱を帯び、3200人の収容人数を誇る「東京・インターナショナル・ホール」を包み込む。それはまるでたった今紡ぎ出されたハーモニーを、そしてその熱さを少しも逃がすまいと意思を持っているかの如く––––。
しばらくするとその拍手は一定のリズムを刻み始め、バンドの再登場を会場全体が促す。3人の圧倒的なリズム感が観客に乗り移ったのだろうか、はたまたその醒めぬ興奮によって魔法にかけられたのか、正確なパルスで拍手が刻まれる。
「来る!」
リビングのテレビを占領する少女が呟く。
下手側から赤いノースリーブのドレスに身を包んだ華奢な色白の女性が弾けんばかりの笑顔を浮かべながらステージ中央へと向かう。ステージ中央に辿り着いたその女性は深々と頭を下げる。
再び鼓膜が割れんばかりの拍手が響き渡る。
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