『蚊と我』

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『蚊と我』

 夏が置き忘れた光の残滓。麻地に石榴が散らした鮮やかな斑点模様と、陶器のごとく白き脹脛の細やかさに息を飲む。歓迎されざる縞蚊の囁きは古の穴倉の微かに滲む硝煙の匂いを思わせ、腰まで手繰った固い布団の感触がまざまざと我が四肢を固くする。  おずおずと頁を捲る右手は次に訪れる拙い肉欲を抑えきれずに慄き、やがて耳元に縞蚊の羽を揺する低音を聞けば丘の向こうでちろちろと頭を出す業火の熱さに目を閉じる。罪悪感と背徳の美しい香りは硝煙の尖った香りと鬩ぎ合う。我思う故に我あり。  嗚呼手繰り寄せる頁の、面映ゆい肌色の白さよ。布団の固さを相殺する塵紙束の嫋やかさよ。小さき羽の産む低い不安は地平線の彼方へ消え、安らかに右手を構えた我は己の迎撃態勢のまま速射訓練をく、繰り返す。  汝、こ、この素晴らしき世界に平和を、もももも齎し給えエ――! #男子中学生 #青春 #グラビア
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