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4LDKの広い部屋にアタシだけがいる。黒木についていったのは、まだ探し続ける両親の友人だから。
『俺のそばにいれば会える』
そんな言葉を信じているなんて、子供みたい。よく考えれば、スマホを買ってもらったときに両親の連絡先を聞けばいいのに。
「あぁ、もう!!」
なんで苛つくの?出来る女を気取っていたから?不倫役の時は愛のあるメッセージで事足りたからだ。
クローゼットを開き、ハンガラックにかけてある服を見る。半袖の袖が膨らんでいるワンピースが数着、七分丈のワンピース、厚手の長袖ワンピース。どれも黒色ばかり。
「何にも染まらないと思ってたのに」
アタシ自身の恋なんて一旦忘れて、れんさんのことを考えなくちゃいけない。別れさせるために、アタシがとるべき行動は?
「会いに行くこと」
半袖の袖が膨らんでいるワンピースを着て、黒いドレッサーに向かい軽めにメイクを終えると、流し台に置いた皿を洗い、食器を戻して、洗面所に向かう。
(宮村くんを誘ってちゃっかりデートでもするの?それこそ、公私混同じゃない)
鏡越しにもう一人のアタシが肩に手を添えて笑っている。明るい茶色い髪を櫛にとかして、ヘアアイロンでストレートにしていく。
「こんなに着飾ったっけ?」
真っ赤なリップを重ねて、ティッシュオフして苦笑を浮かべる。バイトに行くのが楽しみなんて思わなかった。生きていくため、お金を溜めるために必死で、周りの人と仲良くなんてしなかったのにね。
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