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忙しさが落ち着いたら、宮村くんにどんな人が来たのか訊ねるのが一番手っ取り早いけど、お客様のことを知りたがるなんて怪しい女だと思われてしまう。ドリンクコーナー脇にあるテーブル席を拭き、ドリンクコーナで待ち伏せをするかなど、色々考える。
「サボってると思われるな」
「お姉さん、独り言多いね」
小さな女の子にボソリと痛いところを突かれてしまう。愛想笑いで誤魔化して、急ぎ足で受付カウンターに向かう途中、宮村くんが小走りに駆け寄ってくる。先ほどまで怪しいお姉さんだと言っていた女の子はイケメン宮村くんに笑顔を見せている。
「お兄さんカッコいい。アタシの彼女になって!!」
「すみません。行くよ」
母親が駆け寄り、ペコペコと頭を下げる。宮村くんは女の子の目線までしゃがみ込むと、太陽みたいな笑顔を向けたまま。
「僕がおじさんになってしまうけど」
小さな女の子に真面目に返す優しいところを見て、女の子はおじさんは嫌と駆け出していく。母親が再び頭を下げて左手通路に向かう女の子を追いかけていく。
「素直だな」
「うん。それよりなに?」
お客様からお呼び出しだと告げた。まさか、手っ取り早く言ってしまったとか?
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