傷をのこしたままなんて寂しいだけだよ

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傷をのこしたままなんて寂しいだけだよ

 ネットニュースの小さな記事には、(くれない)さんがインディーズ時代からのバンドの解散と、ソロデビューを知らせる情報がのっていた。 【こうでもしなきゃ嫌われないでしょ?】  れんさんの最後の一文を見て深くため息をつく。アタシより一歳だけ年下だけど、れんさんのほうが大人な対応をとった。  ガタガタ、ガコン  部屋の郵便受けに茶封筒が入れられた音に気づき、サンダルをつっかけて部屋のドアノブを捻る。部屋に入ろうとしている黒木に声をかける。 「アタシなにもしてない」 「お前、説明書読まないタイプだな?最初の契約書に書いてたぜ」  あくびを堪えもしない黒木は目を細めて部屋へと戻っていく。アタシも部屋に入り、黒いドレッサーに仕舞った契約書に目を通す。 **** 【別れさせ屋契約書】  別れさせるためたら、危険を伴うことは承知の上で引き受けること。なお、命の危機を感じた際は“危険手当て”が割り増しされる。  契約金については以下の通りに行う。 ・依頼人と別れたい相手が別れられたとき ・依頼人の予期せぬ行動で別れてしまった際は“契約破棄金”が発生する ・依頼人の個人情報は一週間後に完全に破棄する。また別れさせ役で使用した衣装や偽造した手間賃は依頼人に上乗せさせる  別れさせ役は、任務が遂行し終えたら、一切のコンタクトはとらないように。
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