傷をのこしたままなんて寂しいだけだよ

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 引き寄せあっていたのかもしれない。これ以上感傷に浸っていても、意味なんてない。終わったことなんだから・・・  茶封筒を手に取り、ラップでぐるぐる巻きにして小袋の中に入れて、浴槽に向かう。  ガコン  天井を開けてスマホのライトで照らしながら、積み重ねていく。封筒が小袋に包まれて増えていく。 「汚いお金」  風呂場に独り言が返ってくる。まったく手をつけてないかと言われたら嘘になる。まっとうなバイトを探せばいいと思ったときもある。けれど、一度スリルを味わったら抜けらないの・・・ ****  八月のお盆に突入して忙しさが増していく。宮村くんとはライン交換をせずに、世良さんのラインが増えていた。 【おばちゃんも昔は恋する乙女、いや今もよ・・困ったら連絡してね】  プライベートのスマホをじっと見つめていた世良さんの視線に交換せずにはいられなかった。押せ押せとはうっとおしいもつくのだと鮭おむすびとスープはるさめを飲みながら思ってしまう。
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