傷をのこしたままなんて寂しいだけだよ

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 杉原さんの名前は知っているけれど、いつも一緒にいたかと聞かれたら嘘だ。都合のいいときだけ呼び出されていた。だから、アタシは苗字呼びにしている。 「あれれ、いないの?」  三十分後、ドリンクコーナにソフトクリームを注ぐついでに受付に視線を向けた杉原さんが残念と肩を落とす。  アタシに視線を向けて受付のテーブルにソフトドリンクのコップを置き、愉快そうに微笑みながら。 「真理亜とは友達でしょ?彼のこと教えてよ?ねぇ、知ってるんだろ」 「プライベートですので」  甘い声のあと、低い声で脅してきた杉原さんの勝ち誇った笑顔が苦手だった。私のものは私のもの。友達のものも私のもの。それが口癖で、クラスの女子の反感を買っていたことに気づかずにいた高校時代。数ヵ月で変わるわけがない。 「あんたまた奪う気?さっき見てたじゃん。彼に言おうか?あ、彼のこと好きなのぉ」  人の彼氏を奪うのが喜びなんだと話されたときは、その顔面に唾を吐きたくなった。けど、アタシは杉原さんのことを言える立場じゃない。
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