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旅立ちとサプライズ
3月中旬、卒業式。
桜吹雪が舞う中、記念写真を撮った。
僕ら3人のスリーショット。
僕は、濃紺のスリーピースのスーツ。
莉子は、髪の毛を編み込んだアップに、空色の小紋、紫の袴姿。
瑛人は、暗めのグレーのスーツ。
校門で写真を数枚撮った。
母さんたち、それから、仲間たちとも。
幼稚園の卒園式の写真は、瑛人がそっぽを向いて、涙目だった事を思い出す。
そんな事を思い出し、“ぼーっ”としていた時、
「やった!」
「すごっ!」
「ぎゃーっ!」
「莉子さんがぁ~!」
「さっすがぁ~!」
「瑛人くん、やだーっ!」
「ステキっ!」
「瑛人、いーぞっ!」
という様々な声が……。
振り返ると、瑛人が莉子を抱きすくめている。
そして、
莉子の耳もとで、何かを囁いたと思ったら、莉子が真っ赤に…。
次の瞬間、
みんなの前で、堂々とKiss…しやがった…。
小6と小5の リアルKiss……。
しかも、公衆の面前…。
その現状に、更に興奮状態の仲間たちの悲鳴と絶叫…。
騒ぎを聞き付けて、先生方がやってくる。
すると、瑛人が、莉子の手を取り走り出す。着物の莉子を気遣いながら…。
僕は、素の自分になる。
面白さが襲い、1人、ゲラゲラと笑っていた。
僕を見て、同級生たちは、目が点に…。
そりゃそうさ。こんな風に、感情を出すなんて、普段、絶対しない。
『でも…、今日くらい、いーじゃん。』
隣で、晃樹が俺に向かって呟いた。
「理人も、大口、開けて笑うんだな?初めて見たわ。」
2週間後、莉子が隣県へ旅立つ。
俺も中学部進学。
瑛人は、小6。
意外とワクワクしている自分がいた。
~おしまい~
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