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わたしはほうせき
生きている場所は、物心がついた時から路上だった。
硬いレンガで出来ている建物の隙間で、どこかの誰かが着古して、もしくは飽きて捨てたのであろう古着を集め寝泊まりをしていた。
拾い集めて来た、自身の体格にかろうじて見合う子供用の服の中で、なるべくおんぼろで汚れの酷いものを選んで身に着ける。
そうして人通りの多い通りに出ると、追い立てられることの少ない教会や、図書館などの前にしゃがみ込む。
もう少し身体が育つまでは、私に出来る仕事はこれしかないと思っていた。
ほら、でもこれだけでじゅうぶんだ。
時折、瞳に哀れみと優越感を映した、上品な身なりの紳士や婦人が、僅かばかりの金銭や食べ物を恵んでくれる。
無知で知識のない自分には、人から与えてもらう以外、金銭を稼ぐことがまだ難しい。
食べ物の方は、レストランの裏口を何件か回ることで手に入る場合があった。
ただ、ねらい目はゴミを出しに来るのが、貧乏な下っ端である時だけだ。
もう少し上の立場である人物が、煙草や葉巻を吸う為に顔を出したら、急いでその場を離れなければならない。
水だけは、公園に噴水があるので困ることはなかった。
しかし、水を飲みに行く際は着替えが必要だった。
手持ちの中で、それなりにマシな服装を見繕わなければ、痩せっぽちでチビでなんの力もない私は、あっという間に死よりも悲惨な目に合う可能性があった。
私の住む路地裏に一番近い水飲み場は、そう言う、治安の良くない公園だった。
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