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「カボチャ煮、できましたぁ」
佐和子の娘や妹の嫁達が
何杯もの器に、甘辛い醤油の
カボチャ煮を配膳、
「おお!きたか、これがないと
法事の気分が出ぇへん(出ない)」
嘉健や家族が箸をつける。
開け放たれた縁側から
竹林とカボチャ畑が見えた。
「おかあちゃん、これ…
いつも作ってくれたけど、
自分は死ぬまで食べへんかった」
(食べなかった)
佐和子は母・シノの遺影にため息。
「『いつか健彦と一緒に食べる』
言うてたなあ……」
健彦、シノ親子が
畠に並んでいるように気がして、
嘉健はカボチャ畑を見つめた。
「健彦兄さんの手紙、
死ぬまで抱いて…」
妹の一人が涙を零す…。
佐和子達兄妹は
兄からの最後の手紙の
一字一句全てを覚えていた。
「うさぎおいし…」
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