零(こぼれ) 灯籠桃源郷

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零(こぼれ) 灯籠桃源郷

灯籠…それは邪気を払い、時には迷い人をあの世へ導く灯火の光。 ねぇ、知ってる?この世の何処かにはね… 『灯籠桃源郷』って言うのがあるらしいの。 そこはあの世とこの世の境で、あらゆる時間軸が入り混じり存在する夢の世界なんだって。 でもね、守らなくちゃいけないことがあって…それを破れば、そこから永遠に出られなくなるらしいよ。 何か知りたい? それはね……灯籠の光が落ちる前に戻って来ること。生者はそれまでに戻って来ないと、永遠に閉じ込められてしまうんだって。 火はすぐ消えることもあるのに、無茶苦茶だって思う? あのね、この世には『灯籠桃源郷の番人』…『守り人』って呼ばれる人がいるらしいよ。その人がくれる灯籠は特別で決められた時間…灯り続けるらいしの。だから、消える心配はないんだって。 どう?興味湧くでしょ。え?恐くて行こうとは思わないって? 確かに。永遠に閉じ込められてしまうかも知れないしね。でも、それは約束を破ったときだけよ。 『灯籠桃源郷』はね、まさに夢の世界なの。美しく、幻想的な世界。体は軽く、疲れることもない。飢えるという概念すらもない。犯罪を犯そうにもその考えすら消えてしまう。だから…そこから抜け出せなくなる人がいる。 夢の世界だけど…同時に死の世界でもある。 あらゆる感情すらも『浄化』されてしまう。 灯籠が灯っている時間はね……人が人で、生者が生者でいられる時間なの。それを過ぎれば……分かるでしょう? なんでそんなに詳しいのかって? さぁ…どうしてかしらね。想像にお任せするけど。 さぁ…あなたは『灯籠桃源郷』に行きますか?
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