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「真面目に全部こなそうとして、いっぱいいっぱいになってるのね」
島尾先生は、優しくふっと笑った。
「私たちは講義で子どもとの関わり方をたくさんお話しするけれど、それを全部できる完璧なママになんて、誰もなれないわ。自分を追い詰めないで」
「でも、他のお母さんたちはみんな出来てます」
私の訴えに、先生は心底驚いたように目を見開いた。
「そんなことない。隣の芝生が青いだけで、みんな同じように悩みながら過ごしてる」
「だけど、理穂の言葉が出なくて」
「口から出る言葉以外も、子どもにとっては言葉なの。それが増えてる理穂ちゃんは、すごく成長してる。それにママだけじゃない、パパもいるし、私たちスタッフも、みんなで理穂ちゃんを育ててるんだから。大丈夫」
大丈夫。先生がくれたその一言が、ネットで調べたどんな情報よりも鮮やかに、出口の見えない暗闇に光をもたらした。
その光が、そばで手を差し伸べる人たちを映し出す。
一人で抱えなくても、よかったんだ。
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