9番目の媚薬

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2日目、3日目…と、同じように娘と王の時間は過ぎていった。相変わらず娘は処女のままだ。 そして9日目の夜がやってきた。 「また何か話すのか?」 「はい。とっておきのお話をいたします。」 「うむ。」 王はちびりと酒を口にした。それを見た娘は、話し出した。 「あるバザールに、貧しいけれど美しい、果物売りの娘がおりました。娘は夢を見ておりました。宝石を身に着け、絹の着物を着て、果物を食べ、王様に愛されることでございます。」 ぷっと王が噴き出した。 「お前の話か?」 「はい。」 「かまわん、聞いてやろう。」 娘は話をつづけた。隣にいたよく当たる占い師のばあさん、そして彼女が語る物語の数々ー 「なるほど、お前の話は、その占い師から盗んだものだな?」 「盗んではおりませんが、聞かせてもらった宝物でございます。」 そして娘は媚薬の話をした。 「まさか、お前は私の酒にその怪しい薬を仕込んだと⁉」 「そのとおりでございます。媚薬は9本、そして今日は9日目の夜なのでございます。」 「ひどい女だ。明日には殺してやる。だが今日は無理だ。とてもお前を手にかけることなど、できそうにない。」 しかしーと娘は話を続けた。 「その9本目の媚薬は、私が飲みました。愛するひとの刃にかかって死ぬことは、わたくしの夢でございます。」 「なんだと?今夜の私は、媚薬を飲んでいないのか?」 「飲んでいらっしゃいません。」 「そんな馬鹿な!」 王はようやく9日目にして娘をベッドに押し倒し、激しく愛撫した。もちろん9日目の媚薬も王の酒に入っていたからだー娘も激しく応じた…多少は演技しながら。 ふたりは結ばれ、そしてシェヘラザードは王妃となった。
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