9番目の媚薬

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宮廷に足を踏み入れた娘は、自分の周りにいた美しい娘たちが次々に召されては消えていくのを知った。 「ねぇ、知ってる?王様は一晩だけ処女を弄んで、殺してしまうのですって…」 真っ青な顔をして話しかけてきたのは、絶世の美女とは言い難い娘だ。 「…聞いてないわ…」 「あたしもよ。こんなんだったら、来なければ良かった…!」 泣きべそで言っていた娘は、数日後に消えた。器量から言って…とうとう私の番だわ…!娘は絶望で気を失いそうになりながら、考えを巡らせた。 ーそうだ!私には9瓶の媚薬がある。9晩だけなら、生き延びられるかも知れないー そして娘が初めて閨房に召される日がやってきた。 「名はなんという?」 入ってきた王はいきなりソファにどさりと身を横たえると、酒を口にしたーもちろん、媚薬入りだー 「シェヘラザードでございます。」 「名前だけは貴族の娘のようだな。ははは。」 馬鹿にした口調で王は言った。 「抱く気にもならんな。かといって出ていくのも億劫だ。何か話せ。」 「はい。」 娘は占い師のばあさんから聞いた、とっておきの面白い話を夜通し聞かせた。身振り手振りで演じながら…そして明け方に王のほうを見ると、すっかり眠りに落ちている。 ーまぁ、寝てしまったわ。こうしてみると、とても美しい若い王様。どうして人を愛せないのかしら? 娘は無事に初夜を切り抜けた。しかも処女のままで。
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