序 章  新  月 ―― 闇に隠れる月

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 月は漆黒の影に隠れ、私はすべてを失うんだ。  私が望んだ世界のはずなのに、こんな幕切れなんて。  本当に、残念。  私たちがしてきたこと、何だったんだろうね。  ひょっとして貫之(つらゆき)も、最後はこんな気持ちになったのかな。  恭子。  私が伊良名(いらな)に来た理由、あなたに話さなかったね。  あなたの秘密ばかり聞いて、私ずるかった。  もし、またあなたと会えたとしたら。  私はきっと打ち明けられる。  私が強くなっていたら、できることだから。  お互いに前より心が強くなっていて。  また友達になれたらいいよね。  かぐやが微笑んだように見えた。  そして私を指さし、私の知らない言葉を唱える。  ああ、終わりだ。  そこで私の意識は――――――――――――――――――  粉々に砕け散って昏い海の底に沈み、永遠に浮かぶことがなかった。
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