マユミ

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空は灰色の雲に覆われていた。しかし、今のところ雨は降っていない。 私は競馬場に来ていた。客はそれほど多くは来ていない。平日の午後、小さな地方競馬場、まあ、そんなものだろう。 客のほとんどは定年退職をして暇を持て余しているような年配の男性。所々、背広を着たサラリーマンもいてる。営業の仕事をさぼって、ここで遊んでいるのかどうかはわからない。 そういう私はというと、ただの料理人。シフトの関係で平日が休みだったり、日曜日が休みだったりする。 という訳で熱烈な競馬ファンという訳ではないが、他に趣味らしい趣味もなく、競馬場で遊ぶことが多い。 なぜなら入場料は安いし、うどん屋、カレー屋、串カツ屋などがあり、食事に困ることもない。そして馬券が当たれば、財布の中身が増える。まあ、そんなことはめったにないのだが。 やがてメインレースの時間が近づいてきた。パドックでは競争馬が周回している。全部で十二頭、大人しく歩いている馬もいれば、首を激しく上下に降っている馬もいる。 私の本命は六番の馬。グレートスカイ。圧倒的一番人気だ。まず、間違いなく勝つだろう。
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