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「というのは?」
「兄たちは頭がいいでしょう。だから馬鹿にされたりしない。むしろ人気者なの」
ポーラの通う私立学園は、裕福な家の子たちが通う学校だった。
ポーラの家は二代に渡ってホテル経営をしていた。大手高級ホテルとして国中に名を知らしめていたけれど、学園に通う子たちの中では大したことがない資産家の方だった。
財閥の子や、医者の名家の子、また親が有名なスポーツ選手や芸能人だったり、そんな子たちが集まる学校だったので、ポーラの家はホテル事業が一時期の勢いよりは落ちていたこともあって、見下されることが時々あった。
「それに比べて私は、勉強もできなければスポーツも全然駄目。体育でチーム戦をすれば邪魔しかしないと疎まれる。今日だって」
溜めていたものを一度口にしてしまえば、涙もとめどなく溢れてきて。
クラスでリレーをしたら、ポーラが転んだばかりに一位から最下位にクラスの順位が転落する。
必死にみんなに謝った。だけどみんなの冷たい目は変わらない。さらには先生が見ていないタイミングで、クラスのリーダー格の男子に腕をつねられた。
「お前のせいでクラスがいつも負ける。ムカつくんだよ」と、最後に言われる嫌なおまけつき。
ポーラの家柄が、それほど格が高くないことを見込んでの行動でもあっただろう。ポーラをつねった男子の父親は政治家だった。なのでポーラは、両親や先生にこのことを話しても向こうには何も言わずに、せいぜい自分を慰めるくらいしかしてくれないと思って黙っていた。
「人は誰にしろ、得意なことの一つや二つあるものです。齢まだ十三の貴方には、たくさんの可能性があります。自分を卑下するのは早々に辞めませんとね」
ジルバートは言葉を続けた。
「さて、残りのアップルパイを食べ終えたら、勉強しましょう。私がみっちり教えて差しあげますから、勉強の心配は無用です」
不敵な笑みを浮かべたジルバートを見て、しまったと思う。
「何度間違えるのですか。さっき公式を教えたばかりでしょう。もう一度叩き込むのです」
ジルバートに宿題を見てもらうと、スパルタ指導っぷりに参ってしまった。
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