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だけどジルバートの指導の甲斐あって、次のテストではどの教科も大幅に点数を上げることができた。
「ジルのおかげよ。赤点がひとつもない」
「お嬢様にしては、頑張られたのではないでしょうか」
給仕たちとダイニングルームの掃除をしていたジルバートは、ポーラのテストを広げて見たあと、笑みを添えて言う。
「父さまと母さまに早く見せたいわ」
だけど、ポーラの予想に反して、両親の反応は冷めたものだった。
「平均点は取れたようね」
母さまが笑みひとつ作らずに言う。
「お前にうちの事業を継がせるのは、適性がないのではないかと心配していたんだ。さらに努力して、兄たちに追いつきなさい」
落ちつきはらった表情で、テスト用紙をポーラに突き返す父さま。
「はい、父さま」
ぐらりと心臓が傾く。一目散にジルバートの元に駆け込んだ。
「ジル・・・」
ジルバートの胸に飛び込んで、さめざめと泣く。
「どうなさったのですか」
さっきあった出来事を話すと、ジルバートがポーラの背をトントンと優しく叩いた。
「私からご褒美にキャラメルクッキーを一枚、差し上げましょう。内緒ですからね」
ジルバートは口元に人差し指を当てて、こっそり言った。
ジルバートがポーラの部屋に、紅茶とキャラメルクッキーを運んでくる。
ふぅと紅茶を冷まして飲むと、少ししょっぱい。唇についた、乾いた涙の味が混じったのかもしれない。
「まぁでも、お嬢様はさらに成績を上げる余地はあるでしょう。私がこれからも指導いたしますので」
ジルバートのスパルタ指導が続くのかと思うとギクリとしたけれど、心強くもあったから「うん」と頷いた。
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