未完成なティアラを、貴方から

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だけど以降、ポーラの努力の最大値がここで限界なのか、ジルバートの指導を受け懸命に勉強しているにも関わらず、平均点を満たす以上の成績には届かなかった。 ジルバートは頭が良く、指折りの名門校卒。ジルバートの指導のおかげで、ポーラなりに成績は上がったけれど、さらに上にいくことができなかった。 ため息をつきながらテレビを見ていたある日。映画の再放送がやっていて、主人公の女優にポーラは目を奪われた。 見た目の綺麗さに惹かれたのもあるけれどそれだけじゃなくて、魂のこもった台詞と鬼気迫る演技に、頭が離れなかった。 ミュージカル映画だったから歌や踊りもあり、彼女はキラキラと輝いていて。時おり見せる力強い笑みに、心が撃ち抜かれていた。 気の弱い主人公がいじめに立ち向かっていくストーリー。劣等感に苛まれた映画の主人公と自分を、重ねて見ていた部分もあったと思う。 「ジル、あの女優はなんていう名前の人?」 「オードリー・ラグナル、ですね」 「私あの人みたいになりたい。顔立ちは全然違うけれど・・・」 オードリーの演技は、血の繋がった家族との間に壁があると日々感じていた寂しさ、心の隙間を埋めるものだった。 貯めたお小遣いでこっそり、オードリー主演映画のビデオを、ジルバートに一本買ってきてもらう。勉強した後の自分へのご褒美に、何度も何度も繰り返し見た。時には、自分の部屋でオードリーの真似をした。 「オードリーは、オーディション番組のシンデレラ・ティアラで優勝してデビューしたのね」 「そうなのですね。そこまでは私も知りませんでした」 「私もシンデレラ・ティアラに挑戦して、女優になりたい。オードリーも昔は、大人しくて泣き虫な子供だったんだって。私もオードリーのようにいつか・・・」 「泣き虫ですか。お嬢様と似ていらっしゃいますね」 ジルバートが悪戯にクスリと笑う。 「応援しています」 ジルバートにだけ伝えた秘密の夢を叶えるために、密かに動き出した。
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