36人が本棚に入れています
本棚に追加
「ジル。演劇部のオーディションの練習に、付き合ってもらえないかな?主人公の姫役で、ジルには王子役をやってほしいの」
「昔は小人役を選んだお嬢様が、今度は姫役に立候補なさったのですか?」
「・・・うん。身の丈に合わないって思いながらも、チャレンジしたい気持ちが拭えなかったの。勉強頑張るから、お願い」
「勉強を頑張るとおっしゃいましたね」
「あ、えと。うん」
ポーラは学年が上がると共に、成績が徐々に落ちていった。元々勉強を頑張っても両親が期待する点までは取れずに、自分の地頭があまり良くないことを悟ってから、勉強をする熱意がどんどん下がってしまう。
兄たちとは、大きな学力の差がついていた。
「一層勉強に励むというならば、付き合って差し上げましょう。私は何の台詞を言えばいいのですか?」
ジルバートが背後から、ポーラが手で広げていた台本を覗く。
するとジルバートから、香水でもつけているのかマリンのような香りがして、ポーラは戸惑った。
(ジルってこんな大人っぽい匂い、してたんだ・・・)
「私は王子役で、ここまでの台詞を言えばいいのですね」
「うん」
「分かりました」
一瞬、しんと空気が静まり返る。そしてジルバートの、王子役の台詞から始まった。
最初のコメントを投稿しよう!