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「琉くん!!!あけましておめでとう!」
「お、お、おめでとう翔太。今年もよろしくな」
「あれ?兄ちゃんは?」
「いるいる。ほら、隼」
尻もちをついて門の影に隠れてしまっていた隼に、慌てながら手を差し出す。
いじけたような顔をしている隼の手が俺の手に重なった。
「なにしてんの?兄ちゃん」
「琉に突き飛ばされたの!」
「どうせ兄ちゃんが何かしたんでしょ!!ほら、琉くん!寒いから早く入って!」
俺の手に抱きついて家の中へと連れていこうとする翔太に、半ば引きずられながら久しぶりに隼の家の敷居を跨いだ。
「翔太、身長伸びたな」
柔らかい髪の毛を撫でてやると、俺を見上げながら可愛らしい笑みを浮かべる。
「琉くんは変わらないね。髪の毛も黒に戻したんだ」
「まー、この時期だかんな」
「それに比べてうちの兄はーーバシッ
呆れながら発さられた翔太の言葉は、俺らに続いて家へと戻ってきた隼の平手打ちによって遮られた。
隼は就活中は黒髪に戻してはいたものの、いまではすっかり茶髪に元通りだ。
「なにすんだよ!」
「こんなカッコイイお兄様の悪口なんて言うからだろ」
「……自分で言うか?普通」
ため息を吐きながらツッコミを入れてから、靴を脱いでリビングへと進んだ。
「琉くん来たよ〜!」
「遅い時間にすみません、あけましておめでとうございます」
「琉くん!あけましておめでとう〜」「おう琉!久しぶりだなあ!」
リビングの扉を開いた瞬間、お袋さんと親父さんから歓迎の言葉が飛んでくる。
この家は、いつもそうだ。
小学生の頃、何度か夕飯をご馳走になったこともあったが、いつだって俺を暖かく迎えてくれる。
「お久しぶりです」
「ねえ琉くん琉くん、トランプしようよ!」
「しねえっつの!俺らは初詣行くの!」
ぐいぐいと俺の手を引く翔太に、隼の怒号が飛ぶ。
「俺だって琉くんと遊びたい!」
「こーら、翔太。ワガママ言わない」
「琉〜元気だったのか?最近顔も見せねえで」
「あっ、はい。変わりないです」
親父さんに手招きをされて、長テーブルのコタツへと歩み寄る。
「ちょっと、あなた」
「良いじゃねえか。俺なんか琉に会うのはどれくらいぶりかも分かんねえんだ」
「そうですね…2.3年振りかな」
「はーー。親父までもこれかよ……」
隼も大きなため息を吐きながら、俺の脇に腰を下ろしてコタツに潜り込んだ。
翔太はその反対側にくっついて離れない。
「仕方ないわねぇ、琉くん、何飲む?」
「あ、気にしないでください」
「それより琉は教師目指すんだってな」
そそくさと立ち上がるお袋さんに答えて間もなく、親父さんからの質問。
ほんと、変わらない賑やかさだ。
「まあ……まだ夢のまた夢って感じなんですけど…」
「夢があるっつーのは良い事じゃねえか。がんばれよ」
ビールを飲みながら朗らかに笑う親父さんは、やはりどことなく隼に似ている。
「ところで琉くんは彼女居るの?」
「はえ!?!?」
温かい緑茶を入れて戻ってきたお袋さんの質問に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
チラリと横目で隼を見ると、唇を尖らせながらテレビを観ていた。
おま……
助け舟出せよ…。
「え!?琉くん彼女居るの!?」
「おー!どんな女だ!」
翔太、親父さん、お袋さんに詰め寄られて、顔に熱が登る。
なんだって恋人の家に来て彼女いるのかって家族全員に詰め寄られねぇといけねんだよ…。
「いや…その……」
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