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「…じゃ何、琉が俺の相手してくれんの」
乱れた髪から覗く瞳に、嫌なくらい熱が籠ってる。
驚きで声も出ない。
サラリと髪をかきあげてくる隼の手は、気持ち悪いくらいに優しかった。
「俺が女と居るとこ見る度、イラついた顔しやがって」
「しゅ、ん…」
拒否することも出来ないまま、隼の瞳を見つめ返す。
いつもと全く違う隼の視線に体が強ばった。
「お前は俺がどうすりゃ満足なの」
何も言い返せないでいると、頬に当ててあった隼の手がうなじへと移動していく。
体を強ばらせながらも隼を見続けている俺に、隼の顔が段々と近づいてくる。
反射的に瞳を閉じてしまった。
「いで」
瞬間、バシッと頭を叩かれて再び目を開けると隼は背中を向けて制服を着直し始めていた。
「ツッコめよ。俺が滑ったみたいになるだろ」
「わ、悪ぃ」
拒否しなかった自分に、自分が一番驚いている。
「俺さー、さっきの女と付き合う事にしたから。暫くお前らと遊べねえかも」
「あー、分かった」
どうせ、また1ヶ月も続かないだろう。
こんな風に報告をしてきたのも、彼女が出来たからと言って俺らと距離を置くのも初めてだけれど…
俺がそれについて深く考えることは無かった。
どうせ続かない。
どうせ直ぐに別れて戻って来る。
軽く考えていた。
けれど、春が終わり夏の訪れを感じても隼があの女と別れることはなかった。
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