変化

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「ま、勘だけど」 「勘かよ……」 はぁ、とため息を吐く俺を奈美さんが人差し指で指さして来る。 「お前な、女の勘はすげぇぞ」 「…ははは」 「ま、どっちにしろ関係ないっつー隼の言葉も最もだな。なんでお前は女遊び止めさせたかったんだ?」 「や…だって、本命いるならーー「あいつは本命と付き合う事を望んでたか?」 まんまと言い当てられて、視線を奈美さんから逸らした。 「なら、隼がどうしようがあいつの自由だろ」 「それはそうすけど…」 言い淀む俺を見て、奈美さんがニヤリと不敵な笑みを浮かべる。 「単にお前が嫌だっただけとかじゃないの?」 「いや、別に…そーゆう訳じゃ」 「ふーん?」 「…ってか、好きなやつ居るのに付き合いたいって思わない意味が分かんねえし」 ごにょごにょと小さな声で抗議する俺に、奈美さんがわざとらしく大きなため息を吐いた。 「お前はお子ちゃまだなあ」 「なっっ」 突然子供扱いをされて、弾かれたようにそちらを見る。 しかし、どこか悲しそうな目で俺を見る奈美さんに、文句を言う事は出来なかった。 「壊したくないものっつーのがあんだよ」 「壊したくない…もの?」 「あいつはさ、多分…自分の気持ちより何より…その本命とやらの事が大切なんだろ」 「え?「奈美さーーん」 「はいはい今行く〜!」 「え、ちょ、待っーーそれどうゆう……」 戸惑っている俺を置いて、奈美さんは店の方へと出ていってしまった。 「はーーーー」 頭を抱えて、すぐ側にあった台に肘を着く。 意味が分からん。 奈美さんに話したら少しはスッキリするかと思ったけど、逆効果だった。 意味深発言されて、子供扱いされて終わりって……。 「あーーー!もう!!」 頭を両手で掻きむしって発狂すると、なんだか悩んでいたのがバカバカしくなった。 ジンジャーエールを半分ほど一気に飲み干して、俺も浜辺へと出る事にした。 突き刺さるような日差しに、僅かに目を細める。 「あ、おーい琉!お前海行くなら日焼け止め〜!」 「夜泣く事んなんぞー!」 店の中から叫び散らかす二人に、ふっと頬が緩んだ。 ヒラヒラと手を振って、持っていたパーカーを着ながら海へと向かう。 火傷しそうな程に暑い砂浜を素足で踏み締めながら、波打ち際を目指した。 「あれー?さっきの店員さん?」 俯きがちに歩いてる俺の顔を覗き込んで来たのは、さっきの三角ビキニの女だった。 「一人?」 言葉を返す気になれず、足をとめずに海を目指す。 しかし、女も諦めずに俺の隣を歩き続けて来た。 「ねえねえ、さっきのボディーガードくんは?一緒じゃないの?」 「……は?」 「一緒に店やってた子!君に手出そうとした瞬間、一瞬すごい怖い顔して庇ってたから、ボディーガードみたいだなあって」 「意味わかんねえ」 ふいっと顔を逸らせて再び歩き出すけれど、それでも女は俺の後を付いてきた。 「名前なんていうの?あたしね、アヤナってゆんだ」 「別に、名乗る必要無い」 「かーーっ!愛想ないねぇ!そんなに彼女が好きか!」 グリグリと肘で押されて、ため息を吐きながらもやっと足を止める。 「彼女とか別にいねぇから。欲しいとも思ってねえ」 隼が俺を庇うために咄嗟についた嘘に頼るのが癪に障って、アヤナを睨みつけながら吐き捨てた。 それでもアヤナは笑みを浮かべたまま俺に近寄ってくる。 「ふーん。居ないんだ、彼女」 「……どーでもいい」 話が通じないと悟り、アヤナとは別方向に足を向けた。 しかしいきなりガッシリと腕に抱きつかれて、上手く歩けなくなってしまう。 「ね、いーじゃん遊ぼうよ〜」 「しつけえ」
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