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夕日に照らされた隼の瞳がキラキラと光っている。
「なあ、琉。好きすぎて、頭がおかしくなりそうなんだ」
「…それ、ほかの女にも言ってんの?」
「言うわけねぇじゃん」
口をついてでたまるで嫉妬をしているような自分の言葉に、恥ずかしさが増す。
「…お前と一緒に居ると、お前をぐちゃぐちゃに犯して自分だけの物にしたくなる…」
突然発せられた生々しい言葉に目を見開く。
顔に熱が籠って熱い。
「引いた?…でもさ、もう限界なんだ。お前の笑顔見るだけで、声聞くだけで……しんどい」
眉を八の字にして言葉を噤む隼の顔が、今までに無いくらいに辛そうで…
居てもたってもいられなくなり、両手で優しく頭を撫でた。
「琉が他の奴と話してるだけで、そいつをぶん殴りたくなる」
「隼…」
「なんで、お前の事を守ってたか、聞いたよな…」
「うん」
「簡単な事だ。…お前に他人が関わるのが嫌だった。他人がお前に傷を付けるのも、お前が誰かに傷を付けるのも」
知らなかった隼の一面が見えて、僅かに驚いてしまう。
「なあ」
「……ん?」
「なら俺も、隼のこと縛っていい?」
俺の頬から手を離して、ただ静かに耳を傾ける隼。
俺も隼の頭に置いてあった手を自分の膝へと移動して、隼の瞳を見つめた。
「お前が女と話したり、…イチャイチャしたりしてんの…やだ」
ずっと、言い訳を探してた。
俺が悩んでんのにお前ばっか!とか
本命居るならちゃんとしろ!とか
違かった。
きっと俺は本命って言葉にすら嫉妬して、隼に一時でも愛されている女たちにも嫉妬してた。
「え、ちょ、それ…」
「きもい?」
笑いながら尋ねると、勢いよく首を左右に振った。
「…んなこと、思うはずねぇけど……」
「ん?」
「ダメだって。俺…んな事言われたら、期待しちまう」
前髪を鷲掴みにしながら呟く隼に、ははっと笑ってしまう。
顔を近づけて、下から隼の顔を覗き込む。
「良いじゃん、しろよ。期待」
「……お前…言葉の意味分かってんの」
「ん、多分」
見上げているまま両手で顔を包まれて、小さく笑った。
隼の顔が近づいて来て、今度は自分の意思で瞳を閉じる。
けど、すぐにハッとして慌てて自分の唇を両手で守った。
「や、やだっ」
「へ!?あ、ご…ごめん!!」
「お前、そういえば彼女居んじゃん!!」
「え、彼女???」
「あのロングヘアの、気強そうな…」
って…それはいつも同じだ!!
毎回同じような特徴の女と一緒にいるから、特定の女を言い表せない。
「あー。…ごめん、あれ嘘」
「は!?」
両手を下ろして隼を見やると、気まずそうな笑みを浮かべていた。
「砂付いてる」
俺の顔に着いた砂を優しく取りながら、ゆっくりと口を開く。
「あの、最後に話した日に…琉にキスしそうになって……ああ、もう我慢出来ねぇなあって思ってさ…距離作る為にアイツにも嘘ついてもらってた。気の合う友達だよ」
「え、そ、そうだったんだ…」
知らなかった真実に一瞬言い淀むけれど、そう言えばあの日、どう見たって情事後だったじゃないか。
そう思ったらどうしてか苛立ちが募って、再び口を開いた。
「…で、でも、やる事はやってたんだろ」
「それもあの日が最後」
ハハッと笑いながら言われて、目を見開く。
この万年発情期とも言える隼があれからやってないだって???
病気か?
「あ、今失礼な事考えてんだろ」
「や…別に……」
「お前がキス顔晒してくっからほかの女にヤル気起きなくなっちまったんだよ。どうしてくれんだ」
「…キス顔って」
ぶすくれながら俺を見る隼が、やけに可愛らしく見える。
「…ん」
「へ?」
ずいと唇を差し出されて、目を見開いた。
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