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「しても良いって思ってたら、琉からして」
冗談か本気かよく分からない隼のテンションに、目を見開いた。
「む、むむむむむ無理」
「あっそ。ならもういいよ。下りて」
いじけたように言う隼に、戸惑ってしまう。
でも、いまキスをしてやったらこいつは喜ぶのだろうか。
そう思ったらそれも悪くないと思えた。
グッと拳を握りしめて覚悟を決める。
隼の頬を両手で掴んで、一瞬その唇を奪ってやった。
どうしようもない恥ずかしさに襲われて、居てもたってもいられず隼の胸板に倒れ込んだ。
「無理、死ぬ。心臓痛てぇ」
今までにないくらいに心臓が大きく脈打ってる。
下手したら、隼に聞こえんじゃないかってくらい。
けれど、手を当てた隼の体から伝わってきた心臓の鼓動も俺と同じ位に大きかった。
「え、おま…心臓やべぇぞ。大丈夫か」
自分の事を棚に上げて起き上がりながら言うと、反対に隼は砂浜へと倒れ込んだ。
「大丈夫じゃねえよ馬鹿」
両腕で顔を覆ってはいるが、耳が真っ赤に染まっている。
「お前ほどのやつがなにキス位で赤くなってんだよ…。てかさっきもしたろ」
「…まさかほんとにお前からしてくれるなんて思わねぇじゃん。しかも、どうでもいい奴とのキスとお前とのキス一緒にすんなよ」
顔を真っ赤にして、全身全霊で俺への気持ちを表してくれる隼に愛おしさを覚えた。
「てか、ごめ…そろそろ下りて」
「あ…わり、重かった?」
「いや違…」
手を付いて立ち上がろうとした瞬間、僅かに固くなったものに触れてしまい一瞬にして顔に熱が集中する。
少しの沈黙を置いて、ゆっくりと立ち上がる。
「ごめん、先戻って」
「でもお前それ…」
「落ち着いたら戻っから」
「けど…」
「こんな状況でお前に手出したくねぇの。早く戻れ」
起き上がって俯く隼に諭され、俺は部屋へと歩みを進めた。
「おー!戻ってきた!大丈夫だった?」
「ってかお前顔赤くね?焼けたか?」
尚と雷にそれぞれ言われて、手の甲を顔に当てた。
思ったよりも顔が熱くて、嫌になる。
「焼けた……のかも」
「仲直りできた?」
「…ん」
「なんだビビらせんなよ!バラバラに戻ってくるからダメだったのかと思っただろ!」
「二人とも心配掛けて悪かったな」
そそくさと風呂の準備をしながら言うと、にっこりと微笑む2人の顔が視界に入って来た。
「スッキリした顔しちゃって」
嬉しそうに言う尚に、いたたまれない気持ちになる。
「尚、ありがとな」
「なにが?」
「俺も隼も、ちゃんとここに連れて来てくれて」
優しく微笑まれて、俺も笑みを返した。
てか、俺たちは仲直りしたってことになんのか?
風呂用の小さなバックを持ちながら、ふと疑問に思ってしまう。
「あ、俺ら先入ったから行ってきていいよ」
「分かった」
「ただいま〜」
風呂に向かおうとした瞬間、隼が帰ってきて咄嗟に視線を逸らせた。
「おう隼!おかえり〜!」「おかえり」
「おう。二人とも心配かけてごめんな」
ハハッと笑いながら言う隼に、尚と雷も笑みを浮かべた。
「じゃ二人でお風呂行っといで〜」
「「は!?」」
「え?だって仲直りしたんだよね?」
「それは…そう、だけど」
「じゃあいいじゃん!」
しどろもどろになる俺に、尚が天使のような笑顔を向ける。
「てか別々に入る方がおかしいだろ」
ガハハっと雷に笑いながら言われ、俺らは有無を言わさず風呂場に向かわされた。
「…てか、ほっぺ大丈夫?」
「あー、今はまだ余裕」
「明日には痣になりそうだな」
横目で隼を見るけど、隼はこちらを見ることは無かった。
僅かに赤くなった頬が痛そうに見えた。
「…ってか、やっぱ無理!!!俺外で待ってるから先入ってきていいよ」
「へ?あいつらに怪しまれんぞ」
「怪しまれてもなんでもいい!無理なもんは無理!つーかお前もさっきの事あって良く平然とそんなこと言えんな!!」
バッとこちらを向いた隼と目が合ってしまい、顔に熱が籠ったのが自分でもよくわかった。
「へ、平然となんてしてねぇよ」
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