変化

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「…お前さぁ……」 ため息を吐きながら、隼の手が俺の頭に移動してくる。 「俺の事殺したいの…」 耳元で響く隼の声に体が小さく跳ねた。 尚や、雷にこんな感情は抱かない。 こいつだけだ。 どうしようもなく恥ずかしくなるのも、寂しくなるのも、こいつにだけだ。 でも、知らない。 こんな感情。 こわいくらいに頭の中が支配されて、ぐちゃぐちゃにされて、熱い。 そっか。 この感情が…そうなのか。 「……好き」 グッと隼の服を握りしめながら呟いた言葉は、波の音よりも小さいように感じた。 けれど、すぐさま俺の体を離そうとする隼の動きで、ちゃんと伝わっているという事を実感した。 「え、ちょ、琉!ね、一回……」 「やだ、無理、今顔見んな」 「えーーーー」 唸りながらも力強く抱きしめ直されて、俯いたまま俺も抱きしめ返した。 「やっばい。俺、今死んでもいいかも」 「……馬鹿」 サラリと髪を撫でられて僅かに顔を上げると、優しく見つめる隼と目が合った。 無意識に隼の口を塞ぐ。 目を見開いたのはほぼ同時に思えた。 「え、と…ちょ、間違えた」 真っ赤になりながら言うと、隼は嬉しそうに笑った。 「なんだよそれ」 俺の髪をかきあげて上を向かせる隼の仕草に、男らしさを感じる。 キスをして、2人で笑った。 手を繋ぎながら、砂浜を踏みしめる。 恥ずかしいような、幸せなような、変な感情で頭がふわふわする。 「最後の夏、楽しもうな」 「ん」
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