腐れ縁

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携帯を何度も見て、あいつから連絡が来ていないか確認する。 メールセンターに問い合わせるけれど、やはり新着メールはない。 いつの間にか、午前中の授業が終わろうとしていた。 あいつ、何をタラタラやってんだよ。 いや、まさかもうぶちのめして一人で遊びに行っているとか? …なんて、隼に限ってそれは無い。 俺らが心配しているのを知っていて、そんな無責任な事はしないはずだ。 けど、彰如きに負けるとも思えない。 変な胸騒ぎがして、午前の授業が終わった瞬間に席を立った。 「琉っ!」 教室を後にしようとする俺を、慌てて追いかけて来る尚の声に首だけをそちらに向ける。 心配そうに佇むクラスメイト達の姿があった。 「大丈夫。ちょっと、行ってくるわ」 「じゃあ俺らもーー」 「お前らはあいつの言葉守ってやって。いじけるから」 僅かに微笑みながら言うと、クラスメイト達は心配そうに俺を見た。 「ヤバそうだったら尚に連絡する」 「分かった。絶対だよ」 「おー」 ギュッと携帯を握りしめる尚に手を振って、足早に学校を後にした。 何度か先行とすれ違ったけど、誰も俺を引き留めようとはして来なかった。 もう諦められているのは分かりきったことだ。 彰が居そうな場所… そんで隼が当てられそうな場所っつったら…… あの海岸の倉庫か? 昔何度もやりあった倉庫が頭に真っ先に浮かぶ。 見知った道を走りながら、とりあえずリダイヤルから隼に電話を掛けてみる。 しかし通話口から聞こえてくるのは無機質な音ばかり。 やっぱり出ねぇか…。 諦めて電話を切ろうとした瞬間、やっと通話が繋がり一旦足を止めた。 「隼!!お前今どこにーー『久しぶりだなぁ』 聞き覚えのあるムカつく声色に、無意識に舌打ちをしてしまう。 「てめぇ、何当たり前みてぇに隼の携帯出てんだよ」 『いやぁ煩くてよ。で、ビビって来もしなかったお前が今更何の用?』 「あ?誰がてめぇ如きにビビんだよ。調子乗ってんなよ。いいから隼出せよ」 『あー、隼くん。今電話出れる状況じゃないんだよね』 「は?隼がお前に負かされる訳ねぇだろ」 そう口は言うけれど、手が震えている。 だって、隼の携帯にあいつ以外が出るって事はそうゆう事だって分かってるから。 『はーいはい。ほら、琉ちゃんですよ〜』 ガヤガヤとしている中、彰の声が遠ざかっていく。 『琉っ…!?お前、ぜってぇくんなよ!』 「てめぇ、まだんな事…」 『ってわけなんで』 「彰!今どこにいやがんだよ!」 『どこって…もう分かってんじゃねえの?』 ブチッと通話が切られ、舌打ちをして再び走り出す。 隼が彰に負かされるとは思わないが、どうも良くない状況みたいだ。 潮の香りが漂い、あの頃の記憶が鮮明に蘇ってくる。 隼と背中を合わせて喧嘩に明け暮れたあの日々。 将来なんて考えることも無く、ただただ毎日その日の事だけを考えて生きてた。 いつまでもそのままでは居られないと、将来を考え出したのはつい最近の話だ。 大人にもなりきれず、子供にもなりきれない自分が、どうしようも無くダサいと思った。 子供のままでいられたら、ずっと楽しいままだったのだろうか。 まあ…今はただ、隼を助ける事だけを考えよう。 重い鉄の扉を開けば、複数の男達がこちらを振り返ってきた。 ざっと、20人くれぇか… 「おー。きたきた」 歩み寄ってくる銀髪の男を睨み付け、持っていたバッグをその辺に投げ捨てる。 「よ。ヘタレの琉くん」 「あ?」 「ーーーやめろ琉!!!」 頭に血が上って、我武者羅に殴りつけようとした瞬間、隼の声で俺の体の動きが止まる。 「てめっーーなんで止めんだよ!!!」 「そーりゃそうっしょ。あいつがあんなんなってんの、お前の為なんだから」 「…は?」 訳の分からないことを言い出す彰をジロリと睨み付ける。
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