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隼は違う男に頭を踏みつけられ、体はロープで縛り付けられていた。
血塗れになっている隼を見て、頭が真っ白になる。
こんな状態になっている隼を、初めて見た。
「今日素直にボコられればお前に二度と手を出さねぇって約束したんだよ」
「俺に?」
「そ。あいつの怪我は全部、お前のせいってこと」
「それは違ぇ!!ーーグッ…ゴホッゴホッ」
「隼!!」
叫び散らかす隼の腹を思い切り男が蹴り上げて、隼は縛られたままに咳き込んでしまう。
「てめぇ!!!」
彰の胸倉を掴みあげると、ニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「良いのかよ。お前が一発でも手出したら、お前も、縛られてるあいつも…終わるぞ」
「……ナメてんじゃねえぞ」
ムカつくその顔を地面に向けて思い切り殴りつけ、突っ伏す前に蹴り上げる。
彰から鼻血が吹き上がり、顔面を抑えてその場に蹲った。
そのまま思い切り腹を蹴り付ければ、そのまま震えて立ち上がっては来なかった。
「おら!かかって来いよ!」
片っ端から殴り掛かり、殴っては殴られ、蹴っては蹴られを繰り返していく。
荒れた息を整える余裕も無いまま、一人一人着実に地に伏せさせて行く。
「チッ……おい!琉!縄外せ!」
「隼…ハッハァッ…ハァッ」
口に滲んだ血を拭って、隼の元へと走る。
半分ほど残った男たちがこちらへと走ってくるが、とにかく隼の元へと突っ走った。
「おいこら!余所見してんな!」
「るせぇな」
顔面を思い切りぶん殴って、隼の体に巻きついた縄を無理やり外す。
「っいで!」
「ワガママ言うな」
パラッと縄が解けた瞬間、頭を引き寄せられて隼の方へと体が傾いた。
「おまっーー何」
ボゴっと直ぐ背後で鈍い音がして、人の倒れる音がする。
殴り掛かって来てたのか…。
「……わり」
立ち上がりながら隼の手をグイッと引いて立ち上がらせてやると、隼は痛みに顔を歪ませた。
「あーークソ!痛えな」
「……お前はほんと…後で覚えとけよ」
「え?なんて?」
間抜けな顔して聞き返してくる隼を無視して、残った僅かな敵の元へと走り出す。
俺に続いて、隼も共に走り出した。
こんなボロボロなのにどっからその体力来てんだよ…。
濡らしたハンカチを河原に寝転んでいる隼の頬に当ててやる。
冷たかったのか、ビクリと体が小さく揺れた。
「…ありがと」
「で。なんか言い訳あんなら聞くけど」
後ろに手をついて足を伸ばして座りながら言えば、隼はこちらに顔を向けて気まずそうな顔をする。
「……お前に怪我は似合わねえから」
朝と同じことを言う隼に、大きなため息を吐いた。
「だからそれ意味わかんねって。お前に守られる筋合いねぇんだよ」
「まあねー、琉は強いから」
「強い強くねぇの話じゃねえだろ。お前が一人でそうやって怪我してんのが嫌なんだよ」
俺の言葉に隼は小さく笑った。
「いや笑い事じゃねぇよ。お前のせいで俺がヘタレって言われてんだぞ」
「もーヘタレでもよくね?喧嘩すんのやめろよ」
「お前に言われてもなんの説得力もねぇって…」
呆れながら言う俺の口を、隼がジッと見詰めてくる。
「……んだよ」
「口切れてる」
「おめぇもな。つか、お前の場合顔腫れてんぞ」
「俺はいいの」
「馬鹿じゃねぇの。次同じ事しやがったら絶交だかんな」
「絶交……」
絶交という言葉を聞いて、腹を抱えて笑い出す隼を鋭く睨みつける。
「いででで……腹痛てぇ…笑わせんな」
声を抑えながら笑う隼に、呆れてしまう。
「俺本気で怒ってんだけど」
「だって絶交って、聞いたの小学生以来だぞ」
横を向いて丸まりながら笑う隼を見て、大きなため息を吐く。
「うるせぇやつ」
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