始まりの年

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「どんな子?同じ学校?」 俺の反応を見て、恋人が居ると確信したお袋さんが身を乗り出して質問を重ねる。 親っつーもんはどうしてこうも子供の恋愛事情が気になるのかな…。 「お、なじ…学校……デス」 「あら〜。あらあらあらあら!顔真っ赤にしちゃって!よっぽど好きなのね」 ……勘弁してくれ…。 よく見るとお袋さんの頬も赤く染っているし、テーブルに置いてある空き缶を見る限りお袋さんも酔っ払っているのだろう。 「どんな所が好きなの?」 「え……と…優しい…所……と、一途なとこ…ですかね」 「そう」 さすがにただそばに居たいと思った。 だなんて、そんな事は言えずに正直に思う事を答えた。 なんだって隣に本人が居るのにこんな事を言わなきゃならないんだ。 こんな拷問があるか。 「良い彼女さんなのね」 「まあ…そう……かも知んないです」 「琉くんの彼女見てみたい!写真とか無いの?」 ズイと顔を覗き込まれて、その頭を優しく撫でてやる。 「無いかな〜。ごめんな翔太」 「琉の彼女ってんだから、べっぴんさんに決まってるだろ」 「へ…」 大口を開けて笑いながら言う親父さんの言葉に目を見開いてしまう。 「そうねぇ。琉くん、暫く見ないうちになんだか綺麗になっちゃったものね」 「いやぁ…」 ……ってか、綺麗って。 男子高校生に使う言葉じゃないような気もするけど…。 「ねえねえ、いつか会わせてくれる?」 「え?俺の彼女と?」 「うん!その彼女さんとも仲良くなれたらいいなぁ」 「はは。翔太ならなれるよ」 「そういえば、隼の彼女も同じ学校みたいなんだけど、琉くん知ってる?」 「い、いやあ……こいつ、ころころ変わるからなぁ」 気まずくなって目を逸らすと、お袋さんはビールをのみながら隼と同じように唇を尖らせた。 「それが今回は違うみたいなのよ」 「そうそう!確か夏辺りから同じ人なんだよね、兄ちゃん」 「んー」 「お前そろそろ連れて来たらどうなんだ」 ……なんだこの状況は 気まずい通り越してどうすりゃいいかわかんなくなってきたぞ。 「ソ、ソウナンデスネ」 「話ばっかりでいつまで経っても紹介してくれないのよ。こんな馬鹿息子に付き合ってくれてるんだから、お礼くらいしたいのに」 「話…デスカ……」 「そうそう。この子もうベタ惚れでね。おっかしいでしょ。今まであーんなにフラフラしてた子が、一人の子に夢中なんだから」 笑いながら話すお袋さんは、どこか嬉しそうに見えた。 「だからねえ、どうゆう子か知りたくて」 「だーから、いつも言ってんじゃん。可愛くて美人で気強くて優しくて、俺にちゃんと正面から向き合ってくれる子だって」 「あんたからじゃなく、他の人からの意見を聞きたいのよ!」 テレビを見ながら早口に答える隼に、お袋さんの呆れた声が返ってくる。 ……てかお前いつもそんな風に俺の事言ってんのかよ…。 顔に熱が篭もるのを感じながら、前髪を握りしめバレないようにため息を吐いた。 「琉くん、どうかしたの?」 「や、なんでもねぇ」 ジッとお袋さんを見つめて、拳を握る。 「大丈夫ですよ。多分…。顔の善し悪しはわかんないけど、相手も隼にベタ惚れしてるっぽいんで」
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