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おそるおそる目を開けて、すぐ下のリエの顔は強いて見ないようにしながら、首だけを動かして後ろを見てみる。
辺りは、何事もなかったかのように静まり返っていた。
薫は一瞬、今の出来事は全て夢だったのかと思った。扉を開く音を聞いたと思ったのは、気のせいだったのか?
「あら。帰っちゃった」
すぐ下から聞こえた女の声は、ぼやけた意識にぴしりと平手打ちをくらわせた。薫は上半身を起こし、信じられない思いで自分の下の淫らな女を見た。黒いワンピースの下から、白い胸がはだけている。はだけさせたのは自分だ。
起き上がろうとしたら首にかけられた両手が引っかかったので、無視してそのまま起きようとしたら、女の両手に力が入った。なので首を振って無理やり引き剥がさなければならなかった。リエの手は、たった今まで薫の首にかけていたままの形で、空(くう)で止まっている。
リエは、その自分の指先を見つめながら言った。
「あ~………、ちょっと意外。乗り込んでくるかと思ったんだけどな」
「リ、……リエっ……おまえ、まさか……」
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