食い物連鎖

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 僕はワークチェアに身体を預けると、締めていたネクタイを緩めた。 「ユミのやつ、少しおだてたらすぐに調子に乗るから参っちゃうよなぁ」  目頭を揉んでため息をついたあと、店長デスクに上着を置き、立ち上がった。  仕切りカーテンをくぐり抜け、事務所の奥にある温室に入ると、高湿度の空気が肺を満たしていく。  僕は思わず伸びをし、顔をほころばせた。自分にとって唯一気が休まる場所は、ここしかないのだ。 「その点植物は良いよなぁ。裏表ないし、癒やされるし。まぁ、良いか、ユミにはもっと稼いでもらうとしよう」  額を拭い目を細めた。目の前では、ウツボカズラ達が所狭しとひしめき合っている。 「君達にもさらに可愛く仕上がってもらわないとな。よし、生育を良くするために温室を改築して、もっと環境を良くしてだな……」  一人で頷く僕を前に、ウツボカズラ達は、まるで笑うかのように袋の口を開き、ただ妖しく袋を揺らしていた。
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