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2 虫
「そこから離れろっ!」
ガニスは叫んだ。しかし間に合わない。ひとりが巨大な甲虫に喰われた。四肢を噛み砕かれていく人間の叫びが、赤茶けた大地にこだまする。だがそれで済んだわけではない。地中にはまだやつらが潜んでいる。
「レイナが危ない、榴散弾を」
灰色の軽装甲を施した装備の兵士が振り向いてそう言った。しかし後ろの兵士は首を振った。
「さっきみんな使っちまった」
「ちきしょうっ、ここまでかよ」
乗ってきた装甲車が襲われてから三十分も経っていなかった。十五人いた兵も、いまは五人、いやいましがた四人になった。そうしていまひとり、虫に食われようとしている。
「待て、早まるなガニスっ」
ガニスと呼ばれた男は、銃身の短いショットガンを構え、走り出す。
「大佐っ、俺がガニスを援護します!」
「待てユア。もう間に合わない」
大地が震える。地中からぞろぞろと大きな虫がはい出てくる。一匹?いや何匹も。それらはみな飢えている。だがようやくの餌にありつけるのだ。虫たちはみな身も心も震えているかのようだった。
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