36  北へ

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36  北へ

「どうしても、行くの?」 テアが悲しそうな顔で言った。 「ああ、こいつと約束したんでな」 ガニスがテリルを指さした。 「そうだぞ。約束だ」 「頭の中を覗くのは、なしだ」 「ことわる」 「話のわからんやつだな」 「じゃ、お前がクソしてる時だけやめてやる」 「もういいよ」 大佐とレイナが笑ってる。 「フッフッフ」 「おい、このロボット、いま笑ったよな?聞いただろ?なあ?」 ガニスは再び混乱した。 燃料を補給したローバーは、赤茶けた砂礫を走り出す。 「なあ、テリルちゃん」 「何だ、ガニス。気持ち悪いな」 「あの四つ足の」 「スポッツか?」 「そうそれ。どっから出してんだ?」 「秘密」 「なんだそりゃ?いいから教えろよ」 「ダメったらダメ」 「ケチくせえなあ」 「お前の方が臭い。いったいいつ風呂に入った」 「そういうこと言うかね」 ガニスはもうわけがわからなかった。どうして俺たちを助けたのか。街の人たちを助けたのか。もしこいつが神の子だというのなら、それが理由だと言うのか?しかしそれよりももっとわからないことがある。それはこいつの能力だ。あの四つ足といい、このロボットといいわけがわからない。というか、テリル自身人間なのだろうか? 「ねえ、ちゃんと言ったら?ガニス。ごめんなさいって」 唐突にレイナが言い出した。テリルがきょとんとしてやがる。ああそうだったな。クソ、うやむやにできねえか、やっぱ。 「うるせえな、レイナ」 「いや、中尉。こういうことはちゃんとしておかないと、後々まで引きずってしまうものだ」 「大佐まで。あーわかった。わかりました。謝ります。すいませんでした。ごめんなさい、テリルさん。あのときは言い過ぎました」 「感情がこもってないぞ」 テリルのやつニヤニヤしながら言いやがった。 「そんなことないぞっ」 「コトバニ フカガ カカッテルゾ」 「うるさいロボット。おまえだけには言われたくねえっ!」 ローバーは北を目指して走っている。その先に、なにが待ち構えているのだろう。
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