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43 寄生
砂嵐の風と砂礫が容赦なく降りつけている。そんななか、ふたりは立っていた。
「なんの真似だ?テリル。おまえさんが今狙ってるのはこのガキか?こいつは驚いた。お前は俺たちも何も見境なく殺すと言っていたが、まさかこんなガキまでとは」
「いいから離れろ」
テリルの言葉はいままで聞いたことのないような冷たさを帯びていた。
「まてよ、落ち着け。いったいこのガキがなんだというんだ。納得できねえぞ」
「離れないならお前ごと殺すまでだ」
「お前!」
「ガニス。離れたまえ」
大佐がそう言った。テリルに敵わないのはわかっていた。このままではみすみすテリルに殺される。テリルはそういう点で、妥協しない。
「しかし大佐」
「命令だ、中尉」
「どうして?こんな子供を殺すの?なんで」
「やめないか、軍曹」
テリルは慎重に狙いを定めているようだ。こんな子供を撃つなんて、どうかしている。やはりこいつは狂っているんだ。いや、みんな狂っているんだ。
「テリル、やめねえなら俺が相手だ」
「かまわない。手間が省ける」
「なんの手間だ」
「お前のくだらない言葉や行動に、いちいち反応しなくて済む」
「なんだと」
「中尉、命令だ!下がれ」
こんな状況とはいえ、軍隊の指揮は厳格だ。だから今まで生き残ってきたのだ。
「クソっ、なんだってんだ。大佐、俺は納得…」
最後までいう間にテリルのミグザが火を噴いた。タン、と軽い音がして、子供は倒れた。
「マジ撃ちゃあがった。信じられねえ。てめえそれでも人間かよ」
「まて、ガニス。そう怒鳴るな」
大佐が子供の側によると、子供から得体のしれないものが出ていた。それがテリルに撃たれたのだ。
「本体はこの下にいるぞ。テルミットで焼く。その子供を連れて出ろ」
テリルが言うと同時に皆が走り出す。大佐が子供を抱えている。
ボン、と鈍い音がしてドームの中に炎が満ちる。何かが地中から這い出して、うねうねとのたうち回りながら、やがて死んだ。大きな虫だ。センサーがあっても地中にいる虫は感知できないのだ。
「アトラス、これ、取れるか?」
テリルが少年の体から出ている虫の触手のようなものを指して言った。
「ヤッテミマス ノウニ ソンショウナケレバ」
アトラスが処置を始めた。見るにおぞましい光景だった。尻から切り裂いていく。
「セキズイニ キセイ サレテイル」
「取れるか?」
「ヤキキリマス」
「おいおい、大丈夫か?」
ガニスがたまらず言った。
「じゃあ、お前がやるか?」
「いやいい」
人だか虫だかの焼けるにおいが漂った。やがて子供の体に食いついていた虫の一部だったものが取り出される。アトラスは器用に傷を縫っていく。俺もこうして縫われたのかと、ガニスはぞっとした。
「人に寄生して、人をおびき寄せる。安心させたところを襲う。こいつは脳が破壊されていなかったので助かった」
「胸糞わりい虫だ」
「お前と大佐が真っ先に喰われるところだったな」
テリルはニコリともしないで言った。
子供は気を失ったままだが、ここには置いていけない。砂嵐も収まる気配がない。
「こっちにいいものがある」
そうテリルが言った。
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