47  最後の将軍

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47  最後の将軍

なにもないところだと思われたその地面を大佐が少し掘ると、大きな鋼鉄製のハンドルが出てきた。それを回すと地面が割れ、そこに金属でできた扉のようなものが見えた。 それは巧妙に砂礫の下に隠されていた基地への入り口だ。分厚い鉄板でガードされたその入り口は、相当量の高性能爆薬でしか破れないとガニスとレイナも思った。 「分厚い扉だな。どうやってここをぶち破る?」 「ちょ、ちょっと待ってくれないか?」 レナード大佐が珍しく口を挟んだ。 「何かご存じで?大佐」 「何事にも手順、というものがある」 「ここへの入り方をご存じなんですね?」 「いまは入れるかはわからない。ここに入るわたしの認証コードはもう古くて使えないだろうし。だが無理やり入ろうとすれば基地ぜんぶのセキュリティーが起動する。ありとあらゆるところから攻撃が来るだろう」 虫もヒューマノイドも寄せ付けない防御システムってことらしい。 「とりあえずその認証コードって言うのを試していただけませんかね?」 「やってみよう。だが期待は出来ん」 ガニスに促され大佐はその扉の横の、やはり重金属でできたプレートを開けた。そこには樹脂製のスクリーンと、複数の文字配列のボードがあった。大佐がスクリーンに左手の手のひらをあて、右手で文字ボードを操作した。 「やはりな」 手のひらを当てたスクリーンが赤く光っていた。 「認証コードは?」 「やはりわたしのじゃ認証されなかった。ただ、この基地のシステムは正常に稼働しているようだ。五基ある原子炉のどれかはまだ生きているんだろう」 「ということは…」 「さよう。セキュリティーシステムも生きている、ということだ」 つまりこの基地にはどうやっても入れない、ってことだ。 メキメキと金属の悲鳴のような大きな音があたりに響いた。驚いて音のする方を見ると、あのバイオノイドが分厚い鋼鉄の扉をめくり上げているのだ。 「なにやってんだ!てめえ馬鹿か!」 ガニスが怒鳴った。そんなことをしたら基地中の兵器システムが起動し、みんな木っ端みじんになってしまう。 「テリル!いますぐやめさせろ!」 だがアトラスと呼ばれるバイオノイドとテリルは知らん顔をしていた。 「おい!聞いてんのか!」 そうガニスが怒鳴ったと同時にドアはこじ開けられていた。そこは暗い空洞になっていて、小さな赤いライトがひとつ、点いていた。やはりそれも何かのコントロールパネルのようで、そこのスクリーンが光り、映像を映し出した。 ――そこにいるのはレナード中佐か?いや、いまは昇進して大佐か。久しぶりだね そのスクリーンに映っている人物がそうしゃべった。それをおそるおそる覗きこんだレナード大佐はかなり驚いたようすだった。 「あ、あなたはマキリンガー将軍!」 それはこの基地の最高司令官の名だった。アメリ=フレアシス連邦国軍の最後の将軍だ。
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