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48 セキュリティー
――きみが生きていたとは驚きだよ。認証コードが打ち込まれたとき、まさかと思った。だがきみは生きていた。よくぞこの破滅から…と言いたいところだが、残念だがきみはもうおしまいだ。この基地のセキュリティーが起動した。どうにも止められんのだ。会えてうれしかったよ。さようなら
別れの言葉を残し、スクリーンの映像は消え、赤いランプも消えた。
「一方的なやつですね。そうとうに偏屈みたいだ」
「わたしの優秀な上官だ。まあ頑固なのはかわらんな」
「とにかく退避しませんと」
「もう遅いよ。すぐにここは攻撃される。われわれは塵レベルまで粉砕されるだろう」
予想されるのは地中に埋められた無数の防衛システム。対戦車砲塔、自動機銃、レーザー、ロケット、ミサイル…ありとあらゆる兵器がここに集中されるのだ。
「おい、中にはいらないのか?」
そう平然とテリルが言った。ちゃっかり暗い通路に降りている。バイオノイドもそれに続き、なんとレイナもくっついていく。
「なにバカなことしてんだ!はやくそこから出て来い。もうじきここはとんでもねえことになるんだ。そんなに墓穴に入りてえのかよ!」
「中から水の匂いがする。それは欲しい」
「いや、だから」
そんなもん手に入れる前にみんな死んじまうんだよと怒鳴ろうとして大佐に止められた。
「ガニス、ちょっと待つんだ。おかしい」
「はあ?」
「おかしいだろ。なにも起きない。なにも兵器らしきものが出て来ん」
大佐の言うとおりだった。攻撃してくるはずなのに、ずっと静かなままだった。
「オマエラ、おじょうサマに、カンシャスルンダナ。おじょうサマがしすてむヲトメタ」
バイオノイドが扉の中に入りかけ、振り向いてそう言った。どうやらテリルが基地のAIにハッキングをしたらしい。
「だったらドア壊す前にそれやれよ!」
そう怒鳴ったガニスを大佐が止めた。
「いやガニス、それは無理だ。むこうからアクセスがない限りハッキングはできない。だからあのお嬢ちゃんはわざとあのバイオノイドに扉をこじ開けさせたんだ」
「ちょっと!置いてくって言ってるわよ、お姫さまが」
レイナの声にハッとなった二人は、そそくさとレイナの後に続いた。風が強い。地上はもうすぐ砂嵐となる。
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