50  シェルター

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50  シェルター

ここには何度か来たことがある。もちろん入ったことはない。入れるのはこの基地の司令官か、その家族だけだ。そしてせいぜい六人の収容が限度のはずだ。たったそれだけの人間が生き残って、いったい何になるんだろうと、大佐はその重々しいドアを見ながらそう思った。 「ここはなんなの?」 無邪気な顔をしてテリルが大佐にそう聞いた。 「シェルターと言って、外界から隔離された部屋だ。どんな攻撃にも耐えうる外殻がそれを可能にしているんだ」 「ふうん、そうなの」 テリルはなんだか不満そうだ。ガニスはなぜかそう思った。あいつの心の声が流れてくる…そんな気がしたのだ。 「なかに誰かいる。それはわかっているんだが、呼び出す手段がない。ドアをひっぱたいても中には聞こえないからな」 「呼び出せないなら引きずり出せばいいじゃないの」 「乱暴だね。でもそれは不可能だ。このドアと言いこの外殻と言い、ほとんど装甲戦艦と同じ材質でできているんだ。核爆弾だってこの扉や壁は破れないさ」 そう言って大佐は分厚い合金製のドアを拳で叩いた。何の音もしなかった。相当大きな質量のドアや壁だとガニスは思った。 「でもこの中にビスケットがあるんだろう?じゃ、開けなきゃ」 「だから…」 「アトラス、手伝って」 「リョウカイしました」 テリルとアトラスが扉に手をかけた。大佐たちはまさかと思った。だが音がした。金属がこすれ合う音。きしむ嫌な音。それはとても嫌な音だった。それがだんだん大きくなって、やがて扉が大きくひしゃげ始めた。テリルとアトラスがドアをまるで缶詰の蓋のように開けている。なかから嫌なにおいがした。 「やめろ!これ以上ドアを開けるな!」 中からそんな声がしたが、テリルたちはおかまいなしにそのドアをひん曲げていた。 「やめろ!やめてくれ!」 もうそのドアの半分はめくれていて、人が充分通れるほどになってしまっていた。
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