事件発生!

9/9
前へ
/9ページ
次へ
翌日、なぜか特別展のチケットを持っていた神崎が黒瀬と風見に着いてきた。黒瀬と神崎はすぐに仲良くなったが、黒瀬は今回に限っては彼女候補として神崎を狙う気は無いようだった。むしろ黒瀬は積極的に風見と神崎をくっつけようとさえしているように見えた。 「はえ〜すげえな〜」 たくさんの展示を見ながら黒瀬が呟く。風見は聞かれた質問にのみ最低限答えるだけで、いつもの調子で喋ることは無かった。界屋市中にある地下鉄に乗って15分ほど電車に揺られる間も、美術館横の建物に向かって歩いている間もほとんど口を開いてはいなかった。 (……帰りたい。) 「お前今日口数少ないな〜いつもみたいにベラベラ喋れよ。」 「いつもベラベラと喋っている覚えは無い。」 風見は黒瀬相手ならば割と普通に話せるようにはなっていた。しかしそれは近くにいる女子の存在を居ないものとして必死に頭から追い出しているからであって、同世代の女子との会話という難題に慣れたからというわけではなかった。 展示も後半に差し掛かったところ、主人公たちと同じポーズで写真を撮れるパネルがあった。3人は劇中の性別通り、風見と黒瀬が黒い大きな机の後ろで並んで肩を組み、机を挟んで前に神崎が立った。 黒瀬の強い主張によって風見のスマホで撮影したが、その理由はあとでわかった。神崎が写真を送ってほしいと言ったからだ。風見はSora dropで済ませようとしたが、ここも黒瀬の強い主張が功を奏し、やむなくLENEを交換する羽目になってしまった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加