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「お、ニンジャまたやってるじゃん!」
授業が終わって共に自宅への帰途へついているとき、黒瀬がスマホを見てそう言った。風見が見ようと首を伸ばすと黒瀬はスマホをこちらに見せつけるようにしてきた。
『謎のヒーロー"ニンジャ" またも事件解決』
というネット記事のタイトルがあり、その下に今回の事件の概要についてかなり細かく語られていた。今回の事件は目撃者も多かったからだろう。
『実際に近くで見る"ニンジャ"はどんな感じでしたか?』
『うーん……思ってたより身長は低かったねぇ』
(クッ……!)
目撃者へのインタビューでそう語ったTシャツに短パン、ボロボロのサンダルを履いた小太りの男性に、風見は歯を噛み締めた。決して風見は身長が低い方ではないが、こういう言葉は繊細な風見の心に刺さるのだった。
「ぷぷ……ニンジャってチビなのか?」
そう言って黒瀬は吹き出して笑った、目の前に嘲笑の対象本人がいるとも知らずに。
「と、遠くから見てたからそうみえただけとかじゃないのか?」
風見は内心の焦りと憤りを隠しつつ言った。何がそんなにおかしいのか、黒瀬は相変わらず笑ったままである。
「あ、そうだ。」
笑いを収めてきた黒瀬が唐突に言った。
「明日から『サツアメ』展始まるじゃん。明日行こうよ。」
『サツアメ』とは『殺人的雨模様の告白』という最近巷で流行りの漫画原作のアニメの略称である。黒瀬と風見はいわゆるオタ友であり、ともにアニメや漫画について語り合う仲なのだ。明日は『サツアメ』の特別展が市内で開かれることになっている。
「いいね、それアタシも行きたい!」
振り向くとそこには、件の美少女が立っていた。
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