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「この裏切り者……」
黒瀬は吐き捨てるように呟いた。件の美少女が明らかに風見と知り合いである様子で、それも親しげに話しかけたからだ。
「ちょっそれはちが……」
「うるさい。なんでうちの学校でも指折りの女子と無縁男が銀楼の……しかもこんな美少女と親しげなんだよ……」
「だからそれはちが……」
「その方は?」
黒瀬に否定する間もなく神崎は黒瀬の紹介を促してくる。
「い、いやこいつは……その学校のとも……だちとちいうか。」
「はいはーい!こいつの親友の黒瀬悠斗でーす!気軽にゆうちゃんとでもなんとでもどうぞ〜!」
風見が言葉に詰まっている間に黒瀬は自己紹介を済ませ、その上あだ名での呼称を促していた。
「アタシは神崎千春!彼とはニンジャファン友達です!と言っても今日会ったばかりで名前も知らないんだけどね!」
そう言って神崎はてへっ、とでも言いたげに舌を出して自分の頭をコツンと叩いた。
「マジかよ、あ、ちなみにこいつは風見冬也だよ。女子と話すの超苦手だからキョドってても許してやって。てか風見ってニンジャファンだったの?」
黒瀬が得意のコミュニケーション能力を発揮してマシンガントークを始めた。いつもなら風見は難なくツッコむのだが、今回はいつもと違う。
「あ、いやニンジャファンっていうか……」
「うん、そうだよ!今日だってアタシと同じで授業抜け出してニンジャが解決した事件現場まで見に行ったぐらいだもん!」
「は!?お前俺に黙って学校抜け出して美少女とデートか!?腹痛はやっぱり嘘か!」
「ち、違う!!」
「まあデートっていうか、風見君には見かけてもすぐに逃げられちゃったけど……」
「はぁ……お前には失望したよ冬也。なぜこんな見目麗しい女子高生に話しかけられておきながら逃げようとするんだ?」
「いやだから逃げようとしたんじゃなくて……」
風見は反射的に黒瀬の言うことを否定しようとした。しかし、それには風見の正体を知る必要が出てくる。風見は諦めて黒瀬の理屈に合わせることにした。もっとも、女子と話せずにテンパって逃げ出した、というのは本当のことであるが。
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