事件発生!

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事件発生!

『速報です。速報です。界屋(かいや)臨海研究都市でテロが起こりました。犯人は超能力犯罪者(PsC)で、現在界屋市へと向かう大橋を渡っている模様です。』 休み時間、風見冬也(かざみとうや)がイヤホンをつけてスマホを見ていると、海で隔てられたすぐ近くの都市でテロ犯罪が起こったというニュースが話題になっていた。 (最近多いなぁ……) 席を立ってイヤホンをスマホにぐるぐる巻き、そそくさと教室を出た。胸を張って堂々とした様子で廊下を数歩歩くと授業開始のチャイムが鳴ったが気にせず進み続ける。 運動場の端へと行くと、そこには自分より少し背の高い柵が連なっていた。柵に腕をかけて飛び越えると、反対側の地面に着地した。着地と同時に全速力で駆け始める。息は全く切れず、身体もぶれない。今となっては慣れてしまった学校からの脱走には緊張感などほとんどないに等しかった。 「ちょっとあなた!」 街中を走っていると不意に呼び止められた。声の方を振り向くと、そこには近くの有名な女子校で進学校、銀楼(ぎんろう)高校の制服を着た美少女が立っていた。 「……あなたも見に行くの?」 美少女は値踏みするような鋭い瞳をしていたが、声には若干不安そうな様子が籠っていた。身長は風見より少し低く、スレンダーな体型をしているが、女性としてあるべき場所にはあるべきものがついている。 「あっえっと……あの……え……?」 風見は急に話しかけられて言葉につまり、目線をあちこちへとさまよわせ、先ほど学校内を闊歩していたときのような堂々とした様子は微塵も感じられなかった。今では女の子に話しかけられてドギマギしている陰キャ高校生、といった様子である。そしてそれは実際のところ正解であり、なぜなら風見は中高ともに男子校で、4年間同世代の女子とまともに話していなかったからである。
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