買い物デートです。セレブってすごいですね

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 そんなことを考え、氷雨と何でもない話をしていれば女性店員がいくつかのドレスをピックアップして持ってくる。それらはどれも似たようなシルエットのものだ。どうやら、女性店員は澪にはこのシルエットが似合うと判断したらしい。 「こちらはエンパイアというシルエットのパーティードレスになります」  そのドレスのすべては胸元の下に切り替えがあり、その下から直接的にすっとスカートが伸びている。あまり見たことがなく、聞きなじみのない名称だ。そう思い澪がぼんやりとしていれば、女性店員は澪に見えるようにドレスを広げていく。 「榛名様は小柄ですので、こういうタイプがもっとも似合うと私どもは判断しました。小柄ですと、どうしても似合うドレスが限られてきますので……」  確かに、パーティードレスは大人びたものが多い印象である。全体的に大人びた女性の方が似合うのは容易に想像がつく。 「……そうなの、ですか」 「はい。お色は何かご希望はありますか?」  澪がぼんやりと話を聞いていると、不意に意見を求められ目を見開く。……こういう場合、どういう色が良いのだろうか。そんな風に思い氷雨に助けを求めれば、彼は「澪の好きな色を選べ」と端的に返事をくれる。そのため、澪は「……青系が」と小さな声で答えた。 「青系ですね。では、こちらなどは……」  その後もしばし女性店員とドレスの話に花を咲かす。彼女の話術は素晴らしいものであり、気が付けば澪も自分の意見をすんなりと言えるようになっていた。気後れしていた感情も徐々に消え失せ、素直に買い物を楽しめるように。 「では、こちらですね。お包みしてきます」  最終的に澪が選んだのは、深い青色のパーティードレスだった。それに似合うアクセサリーなどもすべてこちらで揃うということなので、そちらも準備してもらう算段もつけた。……正直、値段に関しては恐ろしくて聞くことが出来ない。  ちなみに、氷雨はカードで買っていた。そう言えば彼は昔から現金をあまり持ち歩かない主義だったなぁとも、思い出す。
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