パーティーです。場違い感がすごいですね

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「――っつ!」  澪が驚き慌ててそちらに視線を向ければ、そこには背の高い美しい女性がいた。  彼女は緩やかに波打つきれいな黒色の腰までの髪の毛を持ち、にっこりとした笑みを浮かべている。その美しさにぼんやりと見つめてしまえば、氷雨の「……葉山のところの」とボソッと声を上げる。 「えぇ、葉山のおじさまのお知り合いでしょう? いえ、ここにいらっしゃっているということは、間違いないのだけれど」  ゆるゆると首を横に振りながらそう告げ、女性は氷雨ではなく澪の方に一歩を踏み出してくる。それに思わず後ずさろうとするものの、氷雨に腰を抱かれてしまい逃げるに逃げられない。 「初めまして、可愛らしい方。わたしは葉山 夏蓮(かれん)と言うの。葉山のおじさまの姪よ」 「……あ、四条 澪と申します」  丁寧に自己紹介をされ、澪は思わず頭を下げる。そうすれば、隣で氷雨の小さな舌打ちが聞こえたような気がした。が、それを気の所為だと思い澪は夏蓮を見つめる。  夏蓮はとても美しい女性だ。すらっとした身体つきにはそのパーティードレスがよく似合っている。彼女のような大人っぽさを持てば、どんなパーティードレスも似合うのだろう。……そして、氷雨の隣に立っていてもよく似合うだろう。  そんなことを考えていれば、夏蓮の手が澪に伸ばされる。その後、彼女は澪の頬にその手を当てると「可愛らしい子は、好きよ」と言いながら妖艶に微笑む。そこには、同性でさえ見惚れてしまいそうなほどの魅力があって。澪はぼんやりと夏蓮のことを見つめてしまう。  しかし、澪と夏蓮の間に氷雨が割り込む。そして、彼は「澪にちょっかいを出すな」と言いながら夏蓮をにらみつけていた。 「あらぁ、嫉妬? 男の嫉妬は醜いわよ?」  ころころと声を上げて笑いながら夏蓮は肩をすくめる。だが、その目の奥には面白いとばかりの感情が宿っており、澪の心をざわめかせる。 「どうかしら、澪ちゃん? 女性同士あちらでお話でも」 「……ですが」  その言葉に眉を下げていれば、夏蓮は「彼は今から社交に出なくちゃならないだろうし」と続ける。  それは、正しいのだろう。実際、氷雨は今後仕事の交流を行わなくちゃならない。先ほど氷雨は澪に「隣で笑っているだけでいい」と言っていたが、側に居るのはいるので迷惑かもしれない。 「澪」 「氷雨君。……私、葉山さんと一緒にいる」  氷雨の目を見てそう言えば、彼は露骨に視線を逸らす。けれど、何かに納得したかのように「じゃあ、ここに居ろ」と言って踵を返す。そうすれば、氷雨は様々な人間に囲まれていた。相手は主に男性だ。どうやら、コネづくりにいそしむらしい。
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